〜ENGINE〜



ENGINE:エンジン

230SLはその名の通り、2300ccのエンジンを搭載する。しかし、私が購入したこの230SLには3年前に2800CCの280SLのエンジンとの乗せ換えの構造変更申請が行われている。これは、私がこのクルマを購入した大きなポイントの一つでもある。エンジンの排気量やタイプの異なるものに乗せ換えると、車検を通すには構造変更というそれだけでも手間も時間も知識も要する仕事が必要になる。このクルマは、構造変更もきちんとされていて、堂々と車検を取ることが可能だ。そこまでやるからには、下手な仕事はできないはずなのである。エンジンや鬼門の燃料噴射装置なども一式その時に交換されていると推定される。かなりの費用と時間を要して作業したはずだから、もしすぐに故障が生じればクレーム対応という事になるはずである。だから手抜きをすれば、大変な作業のやり直しと部品代をこの仕事を請け負った工場は背負うことになる。そういう意味でも、かなりきちんとした整備作業が行われているはずだと私は踏んだのである。

前オーナーはこのクルマの3番目のオーナーのようだ。製造年のシリアルナンバーから1966年製造で初めのオーナーはフランス(幌収納部の説明文がフランス語だった)で3年のり、その後に日本へ並行輸入され1969年に日本で2番目のオーナーに登録されている。そして1978年に前オーナーが購入している。それから、34年間もこの車を所有し続けている。そして、3年前に大改修を終えている。おそらく3年前に内装レストアとエンジン乗せ換えを依頼したときには一生このクルマを大事にしようと思っていたはずだ。しかし、それからの走行距離は3年で僅かに500キロメートルである。(オドメーターが壊れているのではとも思ったが、オドメーターは正確に積算していた) 昨年に車検が切れて一時抹消して買い手を探していた。何らかの理由があってクルマに乗れなくなったのか、元々飾っておいてたまに乗るだけで満足な人なのかはわからない。もし、このストーリ通りだとすると、このクルマは1966年式でありながら、3年まえの2009年に内装・機関のレストアされ、わずか500キロメートルしか使用されていない新古車の様なものといえるかもしれない。

機械式の燃料噴射装置は世界初のキャブレターから燃料噴射にかわったシステムであるにも拘らず、耐久性は極めて高いらしい。しかし、壊れるとボッシュでのリビルトが必要になるらしくかなり高額となるらしい。これも、今のところパワーは非常に出ていて最高時速200キロの性能は現状で有していた。

エンジン載せ替えについては、整備記録を調査したところ、1986年走行距離9万キロの時にクランクシャフトが壊れて施工されていた。同時にATのOHも施工されていた。燃焼噴射ポンプ(メカポン)のOHは1981年8万6千キロの時に施工されていた。当初の委託販売の説明ではいつエンジン載せ替えをしたかは記載がなく、構造変更時の2009年に行われていると思っていたが、実際にはかなり昔にされていた事になる。ただ、走行距離は極めて少なく、エンジン載せ替え後に僅か2万キロの走行であることが確認できた。

エンジンスターターはオリジナルのモノからパワーのあるものに変更されている。
0.8
馬力から1.5馬力仕様に198896千キロ時に交換されている。
そのためか、エンジンのかかりは極めて軽快で良好である。


掲載項目

1.エアーアジャストバルブ調整
2.
エンジンオイル漏れの量と場所(2012.6.20)
3.ベルト(オルターネーター*2、クーラー*1、パワステ*1)の交換(2016.2)
4.アイドルアップモーター調節(2016.6)
5.エアーフィルター交換・スロットルバルブ清掃(2020/12)
6.スターターモーター交換(2021/8)
7.エンジン始動の補助機能について(2021/10)
8.エンジン始動の補助機能点検(2022/6)
9.サーモタイムスイッチ交換(2022/6)
10.エンジン振動との闘い(2022/7〜9)
10-1.コールドスタートバルブ点検
10-2.点火系点検、プラグコード交換
10-3.燃料系洗浄剤ピットワン投入
10-4.エンジンマウント点検
10-5.ミッションマウント交換


1. エアーアジャストバルブ調整

 納車直後に、PとNレンジでエンストしていた。始動時にもアクセルを少し踏んでおかないと回転が上下しすぐエンストします。不思議な事に、DやRレンジではアイドリングは安定し走行中にはエンストは起きていなかった。それで購入元へ連絡すると、そこでは何ともなく一度もエンストなどした事がないという。それで、エアーアジャストバルブ調整を反時計回りに回してみるように指示され、やってみた。
 少々回しても何も変わらなかったが、180度位回すとエンストはしない程度でアイドリングは落ち着いたが、ややふらふらする。思い切って回していくと360度、1回転したところで、ピタッとアイドリングは700回転で安定した。納車時には酷いコンディションのクルマを買ってしまったかと一瞬ヒヤッとしたが、エアーアジャストバルブ調整で乗り越えられた。
 DやRレンジではアイドリングは安定するのは、このクルマは驚くべき事に、暖気運転時(水温で管理される)でのアイドルアップ機能もあるし、オートマのDやRレンジでのエンジン負荷増加による回転数低下とそれによるエンストを避けるためにDやRレンジでギアが入るときにもアイドルアップ機能がそなわっているためであった。凄いクルマである。


中央のマイナスのネジがエアーアジャストバルブ。これでアイドリング時の燃料の濃さが制御されている。反時計回りでエアーが増える。


この小さな装置が、アイドリング時のエンジンスロットル補助制御を行う。スロットルリンクを機械的に押して回転数を上げる。

2.エンジンオイル漏れの量と場所 (2012.6.20

私のW113はエンジンオイルがオイルパンの右側で漏れが確認された。
漏れている量は、何回かきれいに拭いて、漏れる量を点検したところ、1か月・200Km走行程度で10cc程である。
ATクーラーホースからのオイル漏れはなかった。

また、スピードメーターケーブルの付近でも、僅かにエンジンオイルがにじみ出てくる事が分かっている。こちらは、1か月・200Km走行程度で10cc程であった。エンジンなどに使用されるホルツのシール材を漏れている場所に塗り込み様子を見た所、1か月・200Km走行程度で5cc以下に漏れは減少したが、意外にオイル圧が高い場所からにじみ出ているようで完全に止める事は難しい。

45年も前のエンジンとしては非常に優秀で、総じて漏れは少ない方だと言えると思う。

3.ベルト(オルターネーター*2、クーラー*1、パワステ*1)の交換 (2016.2)
クーラーベルトは劣化しひびが多くなっており作動時の滑りが生じていたため、またほかのベルトは一見ヒビはないものの10年以上前に交換記録であったため、車検時に全て交換を依頼した。 交換後はエンジンのアイドリング音も静かになった。

部品代

工賃

オルタネーターベルト*2

2820

 

クーラーベルト

1410

 

パワステベルト

1300 

10000

 

4.アイドルアップモーター調節 (2016.6)
 W113はATのために、アイドリング時にNやPレンジの時のエンジンへの無負荷の回転数と、DやRレンジのエンジンへ負荷が掛かっているときの回転数を揃えるための補助機構としてアイドルアップモーターがある。その補助は、アクセルリンケージをダイレクトにモーターで押す仕組み=アクセルを軽く踏んでいるのと同じ状況を作る仕組みで行っている。
 NやPで750回転の場合、アイドルアップモーターによる補助なしでDやRにすると600回転くらいになりエンストはしないまでも、アイドリング時のエンジン振動が大きくなる。
 驚くことに、NやPレンジでクーラーをつけた場合にも、クーラーコンプレッサーによる負荷が増えることで、アイドリング回転数を保つためにアイドルアップモーターが働く仕組みになっている。
 このアイドル安定補助機構の調整がかなり難しいのは、DやRにしたときにクーラーをONにしても、アイドルアップモーターはDやRの時と同じ量しか補助をしないことにある。
 仮にアイドルアップモーターの補助量を150回転分に設定。DやRでの負荷による回転低下量を150回転。クーラーの負荷による回転数低下量を150回転と仮定する。つまり、アイドリング状態でNやPで750回転の場合、DやRで750回転になるように設定すると、DやRでクーラーONでは600回転に落ちてしまいエンジン振動が大きくなってしまう。
 それで、クーラーを使う時期には、アイドルアップモーターの補助量をDやRでクーラーONで750回転に合わせるように補助量を300回転アップに調整する必要がある。これが実に難しい。こうすると、クーラーオフの状態のDやRでは900回転になってしまうのである。900回転でも構わないような気がするだろうが、そうもいかない。アイドリングが900回転〜1000回転くらいあると、クルマをブレーキを踏み停車しようとするときに、ギヤが落ちた時にドンッっという実に嫌な振動、軽く後ろから追突されたような変速ショックを感じるようになるのである。このショックは、とても不愉快でたまらない。
 それを解消するには、じつに紙一枚の精度で、アイドルアップモーターの補助量をDやRでクーラーONで700回転、クーラーオフの状態のDやRで800回転程度になるように、調整をするしかない。ボルトで固定されたアイドルアップモーターの押し出し装置を何度も何度もいじくりまわすのは、モーターを壊してしまわないか気が気ではないので、もっと簡便かつ緻密に調整できないかを考えて、ブリキでつくった部品に紙を挟むことを考えた。これは、実にうまくいった。まさに紙一重の調整が簡単に可能となった。

 
ブリキをこのような形状にカットして、内部にテープや紙を挟み込む。


アイドルアップモーターの押し出しプレートにセットする。くるくると回るため、グリースを塗っておくと、リンク側の摩耗軽減にもなる。


スロットルリンケージを推す量を変えるために、この部品の厚みを変えるには、爪を一つあけて、紙を抜き差しすればよいだけである。

5.エアーフィルター交換・スロットルバルブ清掃(2020/12)
 W113のエアーフィルターの交換は、エアーフィルターがエンジンルームの右前方に位置するために、エンジンフードが前向きに開く構造上、手が入りずらくやりにくい。
 エアーフィルターケースを開けるためには、スロットルバルブと繋がっている太いゴム製ホースを外す必要がある。
 古いクルマのゴムホースを取り外すのは破損のリスクが伴うため非常に怖いがチャレンジしてみた。

 <作業手順>
@エアーフィルターケースとスロットルバルブ間のゴムホースのバンドを緩める。
Aエアーフィルターケースに接続するアイドリング保持用のバイパスエアーホースのバンドを緩め外す。
Bエアーフィルターケースの蓋の3つのクリップを解除する。
Cできるだけエアーフィルターケースとスロットルバルブ間のゴムホースに負担がかからないように、エアーフィルターケースの蓋をずらしながらゴムホースを外す。
Dスロットルバルブが見えるようになるので、ついでにキャブクリーナーなどで清掃する。
Eエアーフィルターをケースから抜き取る。ケースも特に蓋の内側は油汚れがあるのでよく掃除しておく。
F新しいエアーフィルターを装着して、逆の手順で元に戻す。

ついていたエアーフィルターには交換した日付"H6.9.9"が記入されていた。H6は1994年であるため、実に26年も交換されていなかったことになる。
エアーフィルターは純正品がディーラーでも手配可能。部品番号 000 094 58 04, 4900円であった。


左側がスロットルバルブ側、中央が黒い蛇腹のホース、右側がエアーフィルターケース


黒い蛇腹のホースを取り外した状態


交換前のエアーフィルター


清掃前のスロットルバルブ

6.スターターモーター交換(123000km, 2021/8)
エンジンを始動しようとしても、スターターが回らないことが度々起こるようになった。その際、カチッという何かの作動音がするときとしないときがあった。
途方に暮れながら、エンジンルームを点検してみて、原因は不明のまま、何度か始動を試みてキーをひねると始動できていた。
半年前に一度あり、その後しばらくなかったが、7月になってから5回も始動ができないことが起こった。
それで、始動が可能になるのはボンネットを閉めるときの振動によることがわかってきた。
スターター不良は、振動で復旧することがあるため、スターター不良、とくにソレノイドバルブの接点不良を疑い、スターターを交換することにした。
198896千キロ時にエンジンスターターはオリジナル0.8馬力のモノからパワーのある1.5馬力のものに交換歴があった。
交換後2万7千キロしか走行していないが、年数的には33年も経っていた。

<スターターモーターの交換方法>
@バッテリーの配線を外す。
Aスターターの配線2本(バッテリーB端子はナット、スイッチC端子はプラスねじ)を外す。
B室内の助手席側カーペットを外して、シフトゲートの右側前にある作業用窓を探す。
C作業用窓を取り外す。プラスねじ数本で止まっている。
Dスターター上側のボルトを、ロングエクステンションに10ミリ六角を装着し、作業用窓から挿入して外す。かなりかたい。
Eスターター下側のボルトナットを外す。

この手順で案外あっけなく、スターターモーターの交換はできる。秘訣はBの作業用窓。これの存在がわからないと、上側のボルトを外すのはかなり厳しい。
スターターモーター(0001314018)はボッシュのリビルト品を正規ルートで注文して手配した。(価格は45000円)
交換後のスターターは非常に力強く、エンジンの始動がこれまでになく容易になった。

しかし、後日、また、スターターが全く動かない症状が再発した。
そこで、さらに、原因を調べていくと、インヒビタースイッチのケーブルに問題があり、インヒビタースイッチがNの位置で動かなくなってしまっていた。
次項に続く。


作業用窓から、上側のスタータ固定ボルトを見ている。


スターターを取り外した後。二本のボルトでエンジンに固定されている。


スターターを取り外した後。二本のボルトでエンジンに固定されている。


スターターの配線部分


ロングエクステンションに10ミリ六角を装着してボルトを取り外す。右側に取り外された太い固定ボルトが写っている。


スターターモーター交換

7.インヒビタースイッチの修理(123000km, 2021/8)
 W113にはATがNとP以外の位置にギアが入っている場合に、安全装置としてスターターに電気が流れない仕組みがある。
 ATのシフトリンケージブッシュが付いているステーにケーブルがついていて、それはボンネットキャッチの向かって右側にあるインヒビタースイッチにつながっている。
 インヒビタースイッチは、ATがNとP位置にあるときにのみ、スターターのC端子にエンジンキーシリンダーからの信号を通電する。(インヒビタースイッチコネクターの向かって右列上下がつながる)
 また、インヒビタースイッチは、ATがR位置の時にのみ、テールランプの後進灯に通電して点灯させる機能をあわせもっている。(インヒビタースイッチコネクターの左列上下がつながる)
 私のクルマを点検したところ、インヒビタースイッチはNの位置で止まっていて、ATシフト位置を変えてもほとんど動かなかなかった。無論、R位置に入れても後進灯は点灯しなかった。
 スターター不良と思っていたエンジン始動不良の原因は、インヒビタースイッチの問題だった。
 アウターケーブルが、固定ステーから外れているために、インナーケーブルの力がインヒビタースイッチに伝達できなくなっていた。
 そのため、インヒビタースイッチはNの位置で宙ぶらりんの状態になり、Rに入れて停車したときに、しばしばNとRの位置の間にずれていたため、始動不可になっていたのだと理解できた。
 始動できなかった時に、エンジンルームを点検した後に、スターター始動が可能になるのは、ボンネットを閉めるときの振動でボンネットキャッチのすぐ近くにあるインヒビタースイッチの位置がずれて、Nの位置に復帰したためだった。

 アウターケーブルを固定するステーに結束バンドでしっかり固定して、動作確認を行い、インヒビタースイッチが適切に動くことを確認した。
 この修理により、エンジン始動トラブルは完全に解決した。


タイラップで固定されたインヒビタースイッチのケーブルガイド(左側がインヒビタースイッチ側。右側がAT側。)


インヒビタースイッチ修理

7.エンジン始動の補助機能について(2021/10)
 W113 230SLはエンジン始動の補助機能が後期モデルの280SLと多少異なっている。補助機能の働く仕組みについて調べたことを記録しておく。
冷間時でも、温間時でも、アクセルを踏んだり、チョークをひいたりせずに現代のクルマと変わらずキーをひねるだけで一発始動できるように工夫されている。
私のクルマの場合は、このいくつもリレーを介した難解な仕組みが55年以上も故障せずに機能しているため、信頼性と耐久性に関してはスペースシャトルの部品並みではないかと感心する。

@ダッシュボードでのイグニッションキーを回し、イグニッションスイッチオン
Aその信号は、リレー番号(32)のTTS(サーモタイムスイッチ)リレーと(20)のタイムスイッチ、インヒビタースイッチを介してスターターモーターの三か所に届く。

B(32)TTSは冷却水温が35度未満の時に開き、(21)始動補助用リレー(スターティングエイドリレー)を介して、(31)CSV(コールドスタートバルブ)と(33)CSS(インジェクションポンプ混合ソレノイド)に信号を送る。
C(31)CSVは燃料を吸気マニホールドに噴射。(33)CSSはインジェクションポンプの燃料噴射量を増量する。両者は、
水温により1〜17秒間作動する。これにより、冷間時のエンジン始動が容易になる。

D(32)TTSは冷却水温が35度以上の時に閉まる。(20)タイムスイッチは閉じる。この時は(21)始動補助用リレーを介して(33)CSSだけを作動させる。これにより、温間時のエンジン始動を容易にする。

E冷却水温に関わらず、(20)タイムスイッチはイグニッションスイッチオンで
1秒間は(21)始動補助用リレーを介して、(31)CSVと(33)CSSに信号を送る。これにより、冷間、温間時ともにエンジン初爆を補助する。

<まとめ>
35度未満>CSS+CSV
35度以上>CSS
温度に関わらず1秒間はCSS+CSV




230SLの場合は、これらのリレーがウオッシャー液の袋の近くに配置されている。

8.エンジン始動の補助機能点検(2022/6)
 2022年5月、エンジン始動が困難になってきた。かかってしまえば、特に問題はない。また温間時始動も問題ない。冷間時、始動補助機能に問題がありそうだった。
 コールドスタートバルブを作動させているシステム回路を調べて、末端のコールドスタートバルブから順に回路を調べていった。

赤がプラス電源回路、黒がアース回路

8-1)コールドスタートバルブ(CSV/33)点検

CSVはインテークマニホールドとスロットルバルブの間程の位置についている。
項目7エンジン始動の補助機能についてで記したように、冷間、温間問わず、始動時1秒間はCSVに電圧がかかる。冷間時は冷却水温によってサーモタイムスイッチ(TTS)のアース通電時間の変化により、CSVに電圧がかかる時間が決まる。

上図は、W113のTTSのものではないが、おおよそこういう感じでCSVへの通電時間は調整され機能していることを理解する参考になる。


アナログテスターで、CSVの端子にプラス、アース端子にマイナスを接続し、エンジン始動させた瞬間に何秒間電圧が生じているかを検査した。
気温24度で、十分にエンジンが冷めた状態で、1秒間程度電圧が生じていた。(YOUTUBE動画リンク
このテストにより、タイムスイッチ(TS)とスターティングリレーの回路は生きていることが確認できた。


CSVは、燃料供給ラインとエアー供給ライン、CSV固定ボルトを外すことで、比較的容易に取り出せる。
ノズルのつまりがないかを点検した。


直接通電テストを行いバルブ動作を点検した。(YOUTUBE動画リンク
インジェクタークリーナーを燃料供給ラインに入れ、バルブを繰り返し作動させて清掃を行った。
CSVには特に問題はなさそうだった。

8-2)スターティングリレー=スターティングエイドリレー/21の点検
スターティングリレーは、タイムスイッチ(TS/20)とサーモタイムスイッチ(TTS/32)の両方からアースで制御されている。いずれかのアース回路がアースに落ちると、ONになり、CSVへプラス電流を通電する。

スターティングリレーは左フェンダー側に並ぶ3つのリレー類の先頭にある。プラスネジで固定されているだけで、容易に取り外せる。

 
スターティングリレー単体での動作テストは良好。接点と端子の清掃を行った。

8-3)タイムスイッチ(TS/20)の点検
冷間温間にかかわらず、スターター起動時に1秒間、スタータースイッチにアースを落とすリレーである。
取り外し、単体での機能テストと接点の汚れを清掃した。


左フェンダー側に並ぶ3つのリレー類の後側に位置する円筒型のリレー


コイルに電流が通電し、一秒後に接点を離す仕組みのようだ。

OFF

ON

8-4)サーモタイムスイッチ(TTS/32)の点検
 点検するために、TTSに配線されている二本の配線を外す。大きい方の銅ボルトで固定されている方がW端子。小さい方がG端子。W端子がスターティングリレーのアース接続する。GはTTS内部のヒーターコイルに通電するプラス電流端子。
 ヒーターコイルは、冷却水温が−20度の場合に10秒間(TTSの種類によって様々)で、W端子側のバイメタルストリップを35度まで温めることでW端子のアース接続を外す仕組みだ。冷却水温が高ければ、35度までバイメタルストリップを温める時間は比例的に短くなる。TTSは車のエンジン特性やCSVの噴射量によって、冷間時始動に必要十分なCSV噴射時間となるように専用のチューニングがされている。
 ヒーターコイルで35度以上まで温められたバイメタルストリップは、スターター始動と連動する電源が切れても、その後、余熱で10秒間程度(冷却水温度に依存)は35度以上を保つ。そのため、エンジン始動に失敗して、再始動させようとする場合に、10秒以内にスターターを回してしまうと、TTSはOFFのままとなり、CSVからの噴射はTSによる1秒だけで冷間時始動に十分な燃料追加を得られなくなる。冷間時始動の際に失敗した場合は、10秒は待ってから、再始動する方がかかりやすいと考えられる。



<簡易点検方法>配線を外してデジタルテスターでテストする。
センサーは冷却水中にあり、35度以上でW端子はセンサーボディー(=アース)と離れる。35度以下でつながる。
G端子はセンサーボディーとの抵抗測定で20オーム。しかし、この方法はのちに間違いであることが判明!ネットの情報はあてにならない!!!


TTSはエンジン左側にある。
私の車両のTTSは、W端子は気温20度、水温100度で絶縁、水温20度で10Mオーム。G端子は温冷間共に96オームだった。
おそらく、接点劣化で通電不良、ヒーターコイルの劣化をきたしているものと考えられた。

9.サーモタイムスイッチ交換(2022/6)
 上記、8、エンジン始動の補助機能点検によりサーモタイムスイッチ(以下、TTS)の故障が考えられたため、TTSを交換することにした。純正品は部品供給終了となっており、代替品としてBOSCHのF026T03100という汎用TTSを入手した。
 入手したTTSをテスターにつないでテストしてみたところ、おかしい。W端子とTTSボディは35度以下(25度)で導通していない。事前にネットで調べていた情報だと、35度以下ではG端子に通電しなければ、W端子はアースと導通していると思っていたが、そうではないことが判明。G端子とTTSボディ間の抵抗値は5Kオーム。これもおかしい。20オームくらいのはずなのである。


 それで、もしかしたら、このスイッチは、G端子に通電した状態で点検しないと機能がチェックできないのではと考えて、机上で配線してW端子がアースと導通するかを点検した。その結果、きちんと、25度では2秒程度、0度(氷水にセンサーをいれた)で5秒程度、W端子はボディーと導通することが確認できた。
 上記、8、エンジン始動の補助機能点検によりサーモタイムスイッチ(以下、TTS)のテスターで故障と診断した方法は間違いだと判明。もしかしたら、オリジナルも壊れてないのかもとおもって取り外して通電の上でテスターで点検してみたら、まったくW端子がボディーと通電することはなく、やはりTTSは壊れていることが判明。振るとカラカラとセンサーの中で何かが動いている音もした。


取り付け基準面からの高さが、純正は3センチ、汎用品は6センチと二倍の大きさ。
センサー部分の深さは汎用品は13ミリも浅い。


コネクター部分が配管にあたるため、回せない。

 この汎用品は二つの点で純正品と大きな違いがあった。
 一つは純正品よりもコネクター側の上部構造が大きく、そのままでの取り付けは冷却水の配管と干渉して挿入不可能だった。
 もう一つは、センサー部分の長さが短い。これは、紙で冷却水のある水位まで届くか確認した所、一応それなりに届くことが判明して安堵。

 
TTSが挿入されている穴に紙を差し込んで、上端からの水位を確認した。紙が濡れている高さまで冷却水は来ているため、センサー部分の長さは1センチ短い汎用TTSでも使用可能だ。

 汎用品とはいえ、約三万円と高額の部品のため、なんとかして挿入できるようにするため、コネクター部分を端子のぎりぎりまで切断した。配線側のコネクターも適合するものを入手しておいたのだが、スペース的に利用不可能だったため、
バラバラに分解して端子のみを使い、絶縁コートとエポキシ樹脂で自作する必要があった。


コネクター部分をノコギリで切断


コネクターもそのままでは配管と干渉して使用不可のため分解。


ここまでスリム化してやっと使えるようになった。

 


TTS交換後。コールドスタートバルブへのエンジン始動時の通電時間を測定したら二秒間通電され、始動性も改善した。

10.エンジン振動との闘い(2022/7〜9、125000Km)
 2022年7月頃からエンジンの回転数が1200〜1500回転付近で車体が振動するような大きな振動を感じるようになった。エンジン本体のトラブルであればDIYではお手上げである。もし自分でやれる範囲でやってみても治せなければ、W113を降りる潮時かもしれないと覚悟を決めた。
 点火プラグの点検をまず行った。2022/5,124600Kmで交換後、二か月500キロ走行後のプラグは非常に良好な焼け具合だった。交換前の点火プラグは、オイル上がりを示すような粒状のデポジットがたくさんついていたので、エンジンピストンリングの摩耗による圧縮不足を最も恐れていたが、取り合えず現状はその心配はなさそうだった。過去のオイル上がりの原因は、もしかすると以前のオーナーが入れていたエンジンオイルが柔らかすぎたことに問題があった可能性がある。

 
2022年7月撮影のスパークプラグ(2022/5,124600Km装着)


2022年5月撮影のスパークプラグ(2012/4,112200km装着)

10-1.コールドスタートバルブ点検
 コールドスタートバルブからの少量の燃料漏れがあると、エンジンアイドル不安定の原因になることがあるらしい。分解して点検した所、非常にわずかな漏れはあったものの、大きな影響を及ぼすような漏れではなかった。
 
#Fuel leak of CSV(Cold Start Valve ), MERCEDES BENZ W113


10-2.燃料系洗浄剤ピットワン投入
 燃料噴射装置やメカニカルポンプの不良、ピストン内デポジットの蓄積によるバルブ閉じ不良が原因の場合、私にできることはほとんどない。燃料系洗浄剤を入れてみて変化があるかを試してみたが、効果はなかった。

10-3.点火系点検/点火ディストリビューター、ローター点検、プラグコード交換
 点火ディストリビューター、ローターを点検し、接点を磨いた。これらに大きな摩耗はなさそうだった。

部品番号(1 235 522 051)


部品番号(1 234 332 088)



プラグコード(ハイテンションコード)の点検
プラグコードの抵抗値をデジタルテスターで測定すると、4番のプラグコードの抵抗値だけが異常に高いことが判明した。
1番10KΩ、2番12KΩ、3番10KΩ、4番200KΩ、、5番18KΩ、6番18KΩ
これが原因に違いないと思って、新品のプラグコードを購入して交換したが、残念ながらエンジンの振動は全く改善しなかった。
新しいプラグコードの抵抗値は全て6KΩだったので、交換はやっておいてよかったとは思う。
純正品と同径7ミリのプラグコードセット14800円、割れていたコードホルダー二個5600円。
 

 


STI製のプラグコードセット。安価だが、良いつくりのプラグコードだった。

10-4.エンジンマウント点検
 エンジンマウントの劣化の点検方法がYOUTUBEに出ていたので、参考にして点検してみたがエンジンマウントの劣化であるエンジンの浮き上がり現象はなかった。

エンジンマウントの点検方法

10-5.ミッションマウント交換
 プラグコードを交換後に、エンジン振動が変わったかを点検していた時に、息子がエンジンの後ろ側を心臓マッサージをするような感じで押すと
振動音が消えることを発見した。
 トランスミッションを軽くジャッキアップしてみると、グチャグチャに劣化したミッションマウントが持ちあがることが目視できた。同時に、エンジンの異常な振動音も消えることが分かった。


劣化したミッションマウント@

ゴムの塊をマウントの代わりに間に差し込んで走行テストしてみたところ、振動は消えていることが確認できた。
ミッションマウントの部品は国内在庫ありですぐに手配することが可能だった。整備工場に作業を依頼。ミッションマウント交換により、エンジン振動との闘いは終結した。

部品番号

部品代

ミツションマウント

A 120 223 04 12

11400

ラバーブーツ

A 111 224 00 82

2110

ラバーワッシャー

A 111 990 06 40

170

上記送料+税

 

2732

交換作業工賃

  6600

合計

23013



 


30年前(走行距離2.5万キロ前)にミッションマウント交換歴があった。その際に左のブーツを装着せずに交換が行われていた。
このブーツはオイル漏れによるミッションマウントの劣化を防ぐために重要な部品だ。


このようにすっぽりとミッションマウントに被せて、油汚れからゴムブッシュを守る。


エンジン振動との闘い