2006年車検(車齢13年目、82000Km)ユーザー車検

 

自動車論(中古メルセデスベンツ編)

 2年前にユーザー車検を行い、この二年間を重大なトラブル無く過ごしてきた私は、差し迫る車齢13年目の車検をどうするか、考え込んでいた。

当然のことではあるが、2年前に最小限の経済的支出で車検を通せたのだから、今回はディーラーでしっかり見てもらおうと考えもした。4年に一回ディーラーでの車検というのであれば多少割高なメルセデス正規ディーラーでの車検だとしても平均すれば、国産車ディーラーでの車検費用と何も変わらないからだ。しかし、人間とはいい加減なもので、今度もユーザー車検でやってしまえば支出は更に抑えることができると考えてしまう面も持ち合わせている。不安が無いと言えばうそになる。ただ、妻子があり、研究という一文の金にもならぬ仕事に付かされている私にとっては経済的な支出は可能な限りおさえたいというのが正直な気持ちだ。

余裕の無い経済状況で古いメルセデスを維持している方は意外なほどいて、W201190E)やW124のメンテナンスのホームページを作成している方々の多くがかなりぎりぎりの線でこの車の維持費を捻出し努力しているのを拝見する。反面、車検ごとに40〜70万円程の整備費を投じておられる方々もやはりベンツ乗りの王道として存在している。最近、私が気になって仕方が無いのは、かなりの整備費用を投じている方々でも、完調を維持でき、かつ長く所有されているかというと、これはまた別らしい事なのである。何十万円も車検に投入したが、肝心のアイドリング不調が根治せず、エンストを度々再発し手放してしまう人や、オートマチックトランスミッションをオーバーホールしたり交換するのに50万円以上払った挙句、数年のうちに結局は細かいトラブルに伴う精神的な面倒くささにより愛情が薄れ潮時という事で手を離してしまう人も、これも知る限りで割と多いようなのである。

おそらく、現在、W201190E)やW124を所有する人間は、この車のメカニズムに心底惚れて中古車として購入している。しかし、セカンドカーとしてこれらの古いメルセデスを所有する程の車へお金をかける経済力を持っているわけではないようだ。車齢が10年以上経過したメルセデスベンツはファーストカーとして毎日の通勤や家庭の足として、普通に使われているようなのである。私も毎日、日曜日以外はこの車を通勤車として使用している。“大金を払って車検をする。” その心理は、“普段使いできる程度まできちんと整備されていないと困る。車を使えない不便さや修理に何度も通わないといけない不便さを考えれば、メルセデスなのだからこれくらいの修理は厭わない”と私は察する。しかし、メルセデスという車はそういう意味では愛情の通じない車であり、メカニズムも部品点数も、消耗部品も、並みの自動車と比べると馬鹿馬鹿しいほど複雑で大げさで手間がかかるから、実際にはどんなにどんどん修理しても結構あちこちと壊れていくものなのである。そうなってくると、“アンナにお金をかけて車検したのに、また壊れやがって、一体どういう車だ!もう、付き合いきれない!”となってしまうのも想像に難くない。何を隠そう、そんなにお金を賭けてはいない私でさえ数万円単位の故障が続いたとき等は心底、車を買い換えたいという衝動に駆られ、ディーラーに100万円台のコンパクトカーを見に行ってしまったり、プログレの中古車が並んでいたりすると判子をつきに行きそうになってしまうことが冗談抜きでよくあるからだ。

大金、おそらく月給以上の費用を投入しているにもかかわらず、あっさりと手放してしまうW201190E)やW124の心理は愛情の裏返しなのだと思う。反面、とことんケチる、とことんDIYでやる、パーツも時には自作までして維持費を抑える、タイプのオーナーは意外に長く乗り続けていたりして、ホームページも細々と更新され続けていたりする。中にはケチりすぎて、本当に車が終わってしまうほど消耗するまで乗りつぶしてしまう人も、多分いっぱいいるのだろうがそういうオーナーはメンテナンスページなど作るわけは無く、知られる事も無いのだろう。多少強引な話の展開となるが、なんで、余り一度にお金をかけない=車検だからといって一気にやってしまわないタイプの方が長く乗り続ける傾向にあるのかといえば、それは多分、“余り過度に期待していないから”という事に尽きるのではないかと思う。今でも時々出版されているW201190E)やW124系のメンテナンス関連書籍には非常に多くのメンテポイントとその経費がまとめられている。そういうのを読んで、早め早めに、予防整備しておかないと後でもっと支出が増えてしまいますよというような書き方がされている項目を、馬鹿正直に優等生的に真に受けてしまい、車検時に車検を通すという目的からは完全に逸脱した形で、あれもこれも車検の機会にやっておいてくださいと頼んでいるからものすごい金額になってしまうのではないだろうか。

実際、私も始めての車であったゴルフUを手に入れたときは、壊れてもいない部分についてもどんどん交換させる傾向にあったので、その気持ちやモチベーションは非常に理解できる。メンテナンス関連書籍の項目を全て、本当に全てやってしまえば、メルセデスという車は本当に新車に近いクオリティーを取り戻すに違いないし、2年間くらいは全く故障しないように思われる。ただ、“本当に全部”=“ほとんどあらゆる箇所のパーツ交換”というほど、問題のあるポイントが多いのでそのために必要なコストは私がざっと計算してみた所、200万円は下らないと思われる。エンジン、オートマチックトランスミッション、補記類全てをリビルト品で交換し、絶対に2年間トラブルフリーにするには300万円近くになるかもしれない。私が整備責任者で、“お金はいくらか買ってもいいから、190Eを2年間ノートラブルにするように、もし、万が一にもトラブルが出た場合にはあなたを殺します。”とでも、いわれたら、そうするしか自信がないからである。でも、実際にはメンテナンス関連書籍の項目を全て、エンジン、オートマチックトランスミッション、補記類全てをリビルト品で交換して、300万円払うからといっても、ディーラー系ではやってくれないだろう。なぜ?って、いくらお金を積まれたって、そんな馬鹿馬鹿しい事に付き合っている暇は無いからである。1年か2年車を個人経営のレストア屋さんに預けてもいいというなら、やってくれるかもしれないが、残念ながらW201190E)やW124にそこまでの価値を感じる人はほとんどいないようでそんな事例は聞いた事が無い。もっと古い190やSLクラスのメルセデス、縦目系のメルセデスにそこまでやる価値があるのかは人それぞれの価値観であるが、そういったかなりクラシックなメルセデスは既にそういうレベルで扱われ、車検整備とはかけ離れた世界で所有され維持されているようだ。

話がそれてきた。余り一度にお金をかけない=車検だからといって一気にやってしまわないタイプの方が長く乗り続ける理由は過度に期待せず、壊れた所だけできる範囲で治していけばいいという至極当たり前の車の維持の仕方をしているからだと思うのである。カローラを15年乗っているとする、あなたは全消耗品を交換して新車の乗り味を堪能したいと思いますか?そんな人はいないでしょう。15年の間にはカローラといえどもマフラーに穴が開いたり、パワーウインドウが壊れたり細かい修理は必ずあったはずです。でも、壊れてない所まで治しておこうなんて普通は考えませんよね。それどころか、多少不都合があっても車検に通らないほどだったり差支えが無いところだったりしたら、少し壊れていてもほったらかしにしていませんでしたか? それが、W201190E)やW124を所有してみた途端に、別人のようにあれもこれも交換してより新車のフィーリングを取り戻そうと躍起になってや、しませんか? そういうモチベーションで、どんどん部品を交換し請求書がかさばっていくのも、少し快感になって、どんどんフィーリングが良くなっていく事に中毒になっていませんか?あなた以外の家族の方は、1万円を車の為には惜しげもなく使うのに、ほかのことにはケチになりすぎていると感じてやいませんか? 何を隠そう私が、そうなんです。このままエスカレートしていくと、おそらく、私も大金を投入しまくったあげくにぷつっとふっきれたようにこの車を手放してしまうのではないかと思うのだ。

だから、私はこの車とこれからも長く付き合っていくためにあえて、最小限の経済的なコストしか投入しないように、自制をし、ストイックなまでに経費を抑えるやり方でやっていくつもりだ。そう、心が決まった瞬間、私は今回の車検もユーザー車検でやる事を決心した。金をかけないことと愛情をかけないことは近いようではあるが、本質的に別の事である。私は車検の為に3ヶ月前から、じっくり、車の状態をチェックし、車検に向けての準備を整えていった。

 

下回りの目視点検では、タイロッドブーツの破損を発見した。これは、車検に通らない問題点なので、無条件に修理する必要がある。パワステポンプの下がオイルで汚れている。それ以外は問題ないように思われた。

エンジンルームの目視点検ではヘッドカバーパッキン周りのオイル漏れが少し多くなってきていて、印象が悪そうだ。増し締めにてモレが止まればと思い、増し締めを施行した所、かえって漏れがひどくなってしまった。ウオーターポンプ付近にまでオイルがたれていっているのが分かったので、ヘッドカバーパッキン要修理となった。点火プラグも5年間交換していないので、要交換項目とした。

外装・電装ではヘッドライトの反射板がさびてきていて光軸への影響が心配だったので、念のため中古パーツと交換した。

エンジンオイルは毎年交換としているので、交換項目とした。エンジンオイルフィルターは1年前に交換済なので無交換とした。冷却水は3年が交換サイクルとなっているようなので、無交換とした。エアーフィルターはさして汚れていない為無交換とした。ブレーキフルードは、液の色調変化で劣化程度の目安を計ると新品時の色と変化無く透明で、劣化を認めがたかったので無交換とした。タイヤは5年目となりだいぶ硬化してきて雨天時の加速時に後輪が空転しやすくなってきた。しかし、深さは新品時の7割は残っているようであるため、もったいないので今回までは無交換とした。タイヤについては早いうちに余裕ができたら、新品交換したいところである。

車検終了後、1週間目にATのシフトリンケージブッシュが破損し交換したので、車検費用として勘定している。

各整備項目については、機関別分類に記載した。

 

税金等

 

重量税

37800

小型検査代

1400

自賠責保険

13560

リサイクル料

14130

書類代

35

合計A

66925

 

車検にともなう整備

 

エンジンオイル交換

9000

タイロッド・ステアリングアブソーバ交換

33680

スパークプラグ交換

1560

ヘッドカバーガスケット交換

9910

ATのシフトリンケージブッシュ交換

6560

 

 

合計B

60710

 

合計A+B

127635

 

メルセデスベンツ車齢13年目のユーザー車検は簡単だったか?

 車検前の整備項目はどれもお約束の項目だった。タイロッド・ステアリングアブソーバ交換以外の項目についてはおそらく整備しなくても車検を通すのには支障は無かっただろう。“ぎりぎりまで経費を削る”と宣言した割には、あちこち最低限以上の整備もやっているねという意見もあるかもしれない。しかし、実際問題として“ぎりぎり”の線引きは難しい。マンション・ホテルの耐震強度偽造事件の総研では、ぎりぎり限界まで経費を削減する=究極のコストダウンで、業界の異端児だったのであるが、実際にはぎりぎり限界どころか、限界をはるかに超える違法な範囲の建築を行っていた。結局、ものすごいコストダウンをしてかなりの儲けを出していたにもかかわらず、かかわった業者は大きな損失・責任を負わされる事となった。車の修理も同様で、車検に極めてぎりぎり通る範囲、時として検査用のだまし技まで駆使する整備だけでは時として後々のコストアップを予感させる。スパークプラグ交換により、アイドリングは安定するようになり、信頼感は格段に向上した。ヘッドカバーガスケット交換により、プラグホールへのオイル貯溜もなくなり、補記類への悪影響も予防された。ATのシフトリンケージブッシュ交換により、シフトフィーリングは元に戻り、誤動作による余計なシフトチェンジが減少しATへの負担は最小限になる。これらの項目を実施する事による費用対効果は高いと判断した。

 ブレーキ系統は今回もノータッチとなった。これが、故障すると“大きな損失・責任を負わされる事”が予測されるのである。しかし、私が知る限り、メルセデスベンツという車は安全にかかわるパーツは、国産車と比べても比類なき信頼性がありそうだという経験からブレーキが利かなくなるほどの異常が突然に起きる心配はほとんど無いに等しいのではないかと考える。私が所有してから、5年間、メンテナンスフリーにも拘らず感動的なブレーキタッチ、制動力は不変であり、ドイツ本国での年間に数〜数十万キロのタクシーとしての酷使に耐久するブレーキシステムという事を考えると、私が5年間で使用したブレーキ頻度などは1年分以下であり、これくらいで故障することはなさそうに思う。ブレーキ周りだけ車検児童等の分解整備を頼もうかという気持ちは非常に強いのであるが、納車時に経験したブレーキのタッチのトラブルの印象から、一度分解して組みなおすとその微妙な精度によっては、ああいう粗雑なフィーリングになってしまわないか(詳細は機関別分類の制動装置の項を参照)が心配である。ローター・パッドともほとんど減少していないのであるが、組直しにより、フィーリングが悪化した場合、おそらく、前のように新品交換によってのトラブルシューティングしか期待できないだろう。この点については、せっかく得た今のフィーリングを崩したくないという気持ちが強く、経済的なコスト削減とは別問題である。

 

 ユーザー車検は簡単に前回と同じように通ったのか?

 いいえ、今回はわりに苦戦しました。まず、ヘッドライト交換後ディーラーで光軸調整したにも拘らず、不合格になりました。雨天時だったので、後輪のブレーキテストでタイヤが回転ドラムの上でグリップが発揮できずドラムが空転してしまい不合格になりました。1回目の検査では上記二項目が不合格になりました。これでおめおめと帰るわけには行きません。最終の判子を押す検査官に、光軸テスターがおかしいんじゃないか!前回車検時は検査官が外車は光軸テスターとの相性が悪い事があるからと、マニュアルモードで測定してくれたのに今回はそれが無かった事を告げました。ブレーキテストはタイヤは止まっているのにドラムがスリップしているのは明らかでした。なぜか、今回は非情にも、整備しなおしてから、また検査しに来てくださいと言われてしまいました。

普通であれば、予備検査場に素直に行くでしょう。でも、私は光軸調整はきちんとしてきたという自信がありますから、再検査ラインに再挑戦することにしました。ですから、速攻でまた回ってきて、再検査ラインに並びました。ブレーキテストは問題なくOKとなり、いよいよ光軸テストです。光軸テストは不合格の場合、2回くらいテスター機械が自動的に再検査します。残念なことに、1回目測定では不合格です。そのとき、私はメルセデスベンツには光軸調整の室内からの操作が可能なことを思い出しました。1回目の測定で不合格が出て、数秒後に2回目測定をテスター機械が行う間に、光軸レベライザーを1段階下げてみました。それで、OK!合格です。1周目で不合格となった右目はOKとなり、終りという訳には行きません。1周目では合格だった左目も再検査されてしまいます。右目が合格になった喜びもつかの間、左目のときにこのまま一段階下げたままにするか、さっき合格した元の位置に戻すかどうかあっという間でしたが、色々考えた末、光軸レベライザーを1段階下げたままで左目が通らないのであれば、左右の光軸がずれている事になりそれは不本意な事である、だから、そのまま、右目にあわせて光軸レベライザーを1段階下げたままやってみようと思いました。結果は両目とも光軸レベライザーを1段階下げたままで合格となりました。光軸テストでダメだった場合の奥義として知っておいて損は無いかもしれません。

時間にして、車検場に8:20について、帰宅が9:40でしたので、1時間ちょっとです。今度の車検は、さすがに6年ぶりにディーラーでしょうね。ブレーキ関係は総OHも予定しています。